医学科 Medicine

精神科学

精神科学講座メンバー

講座メンバー

精神科学講座は辰沼利彦初代教授のもとで昭和51年5月に開設された。平成4年に一ノ渡尚道先生が第2代教授に就任。平成9年に野村總一郎先生が第3代教授に就任。平成25年に吉野相英が第4代教授に就任し、現在に至る。当講座で精神科医としての専門的な教育研修を受けた者は、第1期生から第39期生(令和4年)まで138名に及んでいる。

卒前教育はOSCEやCBTの導入に加えて、BSLから臨床参加型実習(クリニカル・クラークシップ)への変更、CC-EPOCの導入など、この10年間で大きく様変わりした。また、令和6年度には日本医学教育評価機構による医学教育分野別評価の再受審を控え、当講座においてもPDCAサイクルに基づいた医学教育改革が現在進行形で続いている。
当講座では学生が現代精神医学の標準的な診断法、治療法について正しく理解し、医行為を通じて総合的な診療能力を修得できるように工夫している。講義は助教以上のスタッフが担当し、精神医学総論、各論に加えて、医学心理学、精神保健、リエゾン精神医学、司法精神医学、児童青年精神医学等の幅広い分野を扱う。また、自衛隊精神医療に関しては当講座出身の自衛隊医官(兼務講師)に依頼し、現状と展望についての解説をお願いしている。
クリニカル・クラークシップは卒前卒後一貫臨床教育プログラムの前半部分に相当し、当講座で最も力を入れているカリキュラムのひとつである。学生医は4週間にわたり朝から夕方まで初任実務研修医と行動を共にし、主治医チームの一員として病棟回診、初診、リエゾン、電気けいれん療法に立ち会い、小講義形式の臨床セミナーに参加している。特に、受け持ち入院症例に関してはスタッフ、専門研修医の指導下で学生医面接、問題解決型学習を行い、一人一人の学生医に実践的な臨床技術を懇切丁寧に伝授している。また、国立精神・神経医療研究センターのご好意によって部外研修も実施している(新型コロナ感染症対策のために令和2年度からは休止中)。この部外研修では施設見学、小講義を通じて精神科急性期医療と精神科リハビリテーションの現場を体験することができる。現行カリキュラムに対する学生医の逆評価は概ね高いが、現状に慢心することなく、今後も可能なかぎり学生からの要望に耳を傾け、より良い卒前教育プログラムを作り上げたいと考えている。
初任実務研修医の臨床研修は卒前卒後一貫臨床教育プログラムの後半部分でもある。そして、初任実務研修医と学生医が常に行動を共にするバディー制を導入したことによって、研修医は担当学生に助言・指導するという明確な役割も担うこととなり、さらなる責任感の醸成につながっている。臨床研修においては、医官にとって精神医学の知識と技能は非常に重要であることを鑑みて、現代精神医学の標準的な到達点を示し、オーソドックスでバランスの取れた教育を心がけている。また、臨床セミナーはもちろん、ビデオを用いた精神症状評価の指導も実施している。
卒後5年目からの専門研修医教育については、令和2年度より新専門医制度に移行し、当講座は「自衛隊精神科医官専門研修プログラム」の基幹施設を担っている。また、医大病院での研修期間が2年から3年に延長されたことから、3年目は連携施設において臨床研修を受けられるカリキュラムを導入している。連携施設としては自衛隊中央病院を筆頭に、民間病院、精神科クリニックが複数登録されている。専門医の取得が医師としての独り立ちを意味するが、精神科医の場合は精神保健指定医の資格取得も必須である。指定医取得に必要な措置入院例などの当院では経験できない症例については埼玉県立精神医療センタ一の全面的な協力のもとに、資格要件に必要な臨床経験を積ませていただいている。

当講座の研究体制は3つの研究活動から成り立っている。第1は吉野教授を中心に行われている臨床てんかん学研究である。主な研究テーマはてんかんの臨床研究であり、現在はてんかん特異的精神障害の長期転帰について研究を継続している。第2は戸田准教授を中心に行われている生物学的アプローチによる精神医学研究である。その主な研究テーマは、遺伝的要因と環境的要因の相互作用を重視した気分障害やPTSDの病態解明である。特に、環境要因として逆境的養育環境に着目している。本邦での児童相談所での児童虐待相談対応件数は増加の一途を辿っており、今後、ますます重要となる研究テーマである。第3は古賀助教を中心に行われている精神疾患の動物モデルを用いた研究である。その主な研究テーマはモデルマウスを用いた軽度頭部外傷性脳損傷(mTBI)の病態解明である。mTBIでは遅発性の精神症状が深刻となる場合があるが、画像診断では明確な損傷が認められないことなど、病態が明らかになっておらず、早期介入の実現が困難である。そこで、mTBIによる器質的損傷の検出や、病態形成機序の解明、予防や治療法開発への貢献を目指している。最近では、脳組織に存在する免疫担当細胞であるミクログリアの異常な活性化とmTBIに起因する精神症状発症との関連が示唆されたことから、脳内免疫系に着目して研究を進めている。なお、戸田准教授と古賀助教は、平成29年度~令和元年度、令和2~4年度の防衛医学先端研究のストレス・レジリエンス分野の分担研究者として参加した。また、戸田准教授は研究課題名『遺伝環境相互作用にもとづくPTSDの病態解明のための基盤研究』で令和5~7年度の防衛医学基盤研究Bの研究代表者、古賀助教は、研究課題名『脳内免疫系のコントロールによるメンタルヘルスのレリジエンス強化』で令和5~7年度の防衛医学基盤研究Aの研究代表者として研究を推進している。防衛医学研究センターの行動科学研究部門とも連携を密にしており、自衛隊員のサンプルを用いた研究も積極的に実施していく。精神医学の研究範囲は広く、使用する方法論も多岐にわたるが、少人数でも効率よく成果を上げているといえよう。

1.概要

本専門研修は、防衛医科大学校を卒業した自衛隊医官のうち、精神科を専攻するものを対象としたプログラムです。自衛隊医官は、初任実務研修終了後、全国の自衛隊関連施設での約2年間の勤務を経て、防衛医科大学校病院を中心とした施設群で専門研修を3年間実施します。このような自衛隊医官の勤務上の特色に配慮しつつ、到達目標を達成するために、必要とする研修期間を約5年間に設定しています。専攻医は年3~9名を予定しています。全国の自衛隊関連施設で勤務の2年間は、当該施設での勤務に加えて、「通修」制度を利用して週二回程度近隣医療機関で研修することができます。自衛隊関連施設のうち、自衛隊札幌・仙台・岐阜・中央・横須賀・阪神・福岡病院を研修連携施設/関連施設に指定しています。また、専攻医の勤務先が決定次第、自衛隊関連施設の研修連携施設指定化や、「通修」先の施設を研修連携施設に指定できるように協力の依頼を行う予定です。

2.関連施設群の病院について

防衛医科大学校病院を中心とした施設群での3年間の専門研修では、1年目と2年目は研修基幹病院と埼玉県立精神医療センター、3年目はその他の研修施設をローテートして研修します。研修基幹施設は埼玉県所沢市にある防衛医科大学校病院であり、主要な精神疾患の患者を受け持ち、面接法、診断と治療計画、精神療法、薬物療法の基本を学ぶことができます。さらに、身体合併症、コンサルテーション・リエゾン、難治性精神疾患治療、修正型電気けいれん療法、クロザピン治療など、臨床を幅広く経験することができます。また、研究・学会発表についても指導を受けることができます。
研修連携施設である埼玉県立精神医療センターは埼玉県伊奈町にある県の中核をなす精神科病院であり、精神科救急病棟、依存症病棟、児童思春期病棟などさまざまな分野の研修を経験できます。自衛隊中央病院は東京都世田谷区にある総合病院であり、自衛隊員に特色のある精神医療と精神医学全般について経験できます。山田病院は東京都西東京市にある精神科病院で、精神科救急、地域連携、精神科リハビリに力を入れています。武里病院は埼玉県春日部市にある認知症疾患医療センターであり、グループホームや老健施設、デイサービスも併設されています。平沢記念病院は埼玉県所沢市にある精神科単科病院で、認知症疾患医療センターに加えて、睡眠学会認定施設にも指定されています。六番町メンタルクリニックは東京都千代田区にあるメンタルクリニックで、他の連携施設で研修中に週に1回程度通ってクリニックにおける診療を経験することができます。

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