医学科 Medicine

生理学

生理学講座職員

集合写真(令和6年6月7日)
左より瀬谷、田代、守本、萩沢、石渡

昭和49年5月に藤野和宏教授により生理学第一講座が開講され、続いて昭和50年4月に辰野治郎教授により生理学第二講座が開講され、両講座で第3学年の生理学講義と実習を担任した。平成4年3月で藤野和宏教授が退官し、福田潤教授が着任した。平成11年3月で辰野治郎が退官し、西田育弘教授が着任した。平成18年4月に行われた学内全講座再編成により、第一・第二生理学講座は統合・再編され、現在の「生理学講座」と改名された。教授1名、准教授1名、講師1名、助教3名から構成されており、平成30年4月に、守本祐司(本校9期生)が第三代教授に着任し、現在に至る。
本講座の教官は、令和6年4月時点で守本の他、萩沢康介准教授(本校15期生)、晝間恵講師、田代晃正学内講師、石渡遼助教、瀬谷大貴助教(共同利用研究施設兼任)の6名である。

本講座は医学科第2学年に対する「機能医学系生理学」の講義と実習を合わせて194時間、看護学科第1学年に対する「人体の構造と機能Ⅱ」講義を30時間担当している。
医学科第2学年の講義は、「身体をつくるそれぞれの細胞、組織、器官の個々の機能を学び、それらが協調して身体特有の機能を維持させていることを理解してもらうこと」を目標にしている。通年にわたって生理学講座教官が分担(一部を分子生体制御講座教官も分担)して行っている。2020年度のコロナウイルス感染蔓延防止を契機として現在に至るまで、オンデマンド視聴教材を用いた講義をおこなっている(一部の講義を除く)。また、生理学実習は人体および動物を用いた生理機能計測(年6回のペース)を対面指導により実施している。講義の進行に沿って年間5回(第1回試験;総論、第2回試験;腎臓・血液、第3回試験;循環器・呼吸、第4回試験;感覚、内分泌・消化器生理、第5回;神経生理・生殖)の試験を行い、実習の成績とあわせて進級を判定している。
看護学科第1学年の講義は、前期に行われ、本講座教官および分子生体制御講座教官が分担して行っている。それぞれの担当分野から数題出題して作成した試験問題を前期定期試験として実施して、基準得点に満たないものは再試験および再々試験を行い、進級判定を行っている。

生理学講座では、主に、様々な疾患の病態生理の解明および治療に向けた研究を行っている。

  • ⑴ 深部臓器がんの治療を可能とする、無線給電式埋込発光デバイスを用いた光線力学的治療(PDT)技術の開発(守本教官)
  • PDTは光でがん細胞を破壊する治療法で副作用が少なく健常細胞へのダメージは小さいものの、深部臓器に光を届けることが難しいため当該臓器腫瘍への適用は困難であった。私たちは、深部臓器の腫瘍に留置することができ、無線給電で駆動する埋込型発光デバイスを開発し、抗腫瘍効果を発揮するPDTの基盤技術を創出した。現在、ヒトへの応用に向け、関連技術開発を進めている。本法は効果的で安全な治療であり、がん患者は日常生活を送りながら治療を受けることができると期待される。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/moyan
    ORCID:https://orcid.org/0000-0001-6494-413X


  • ⑵-1 血小板機能と凝固障害の制御(萩沢教官)
  • 凝固障害における血小板と血管内皮、好中球や好酸球の機能連関を解明する。とくに、活性化血小板が好中球細胞外トラップ(NETs)を誘導して炎症を惹起する病態を制御する研究を実施している。具体的には、活性化血小板の機能を制御して、臓器障害や血管障害を防止するため、各種動物実験(外傷性凝固障害モデル、羊水塞栓症モデル、動脈硬化モデル)により研究を進めている。


  • ⑵-2 ショック病態における血行動態制御の研究(萩沢教官)
  • アナフィラクトイド反応による血行動態破綻の制御や、出血性ショック治療における虚血再灌流障害を軽減させる研究を行っている。具体的には、血小板と炎症反応の制御やナトリウムイオンと重炭酸イオン動態の制御を目的として、各種動物実験(産科危機的出血モデル、出血性ショックAKIモデル)により研究を進めている。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/hagisawakohsuke
    ORCID:https://orcid.org/0000-0002-1600-4570


  • ⑶ 高血圧症における腸粘膜Na+輸送異常の機構の解明(晝間教官)
  • 日本人は食塩を多く摂るため、食塩感受性高血圧にかかりやすい。その発症には、腎臓でのナトリウム利尿の異常が関与していることが知られている。しかし、Dahl食塩感受性(DSS)高血圧ラットでは、腎臓以外に腸が高血圧の発症に関与している可能性があることが分かってきたが詳細は明らかでない。私たちの研究により、DSS高血圧ラットでは、腸粘膜のNa+輸送が正常に機能しないことや、細胞間隙のNa+透過性が亢進していることが分かってきており、腸をターゲットとした高血圧発症予防に関する研究を進めている。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/megumi-h


  • ⑷-1 女性ホルモン、ストレスが痛みを助長するメカニズムの解明(田代教官)
  • 若年女性に好発する顎顔面部の慢性痛や片頭痛は、中枢神経の可塑的変化が原因とされ、エストロゲンや慢性ストレスが危険因子とされている。このメカニズムを解明するため、電気生理学手法を用いた研究が進められている。

  • ⑷-2 三叉神経脊髄路核内の亜核間の連絡と自律神経系との関係(田代教官)
  • 三叉神経脊髄路核内の亜核が、涙の分泌量や瞬きによる角膜表面の健全な状態の維持に重要である。私たちは、角膜から直接入力を受ける侵害受容ニューロンや、各亜核間の連絡、反射涙や瞬き、眼球内血流量をコントロールするニューロンの特性を解明し、自律神経系との関係を研究している。また、「眩しさ」の感覚がどこで符号化されているかを明らかにするための研究も進めている。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/60598118


  • ⑸ 血管石灰化の発症機序の解明(石渡教官)
  • 国内には1000万人以上が慢性腎不全に罹患しており、その主な合併症である血管石灰化は慢性腎不全患者の死亡リスクを高める。血中リン酸濃度を適正化することで血管石灰化の進行を遅らせることはできるものの、石灰化を退縮させるには不十分である。そこで私たちは、血管平滑筋細胞を主体とする石灰化の進行機序の詳細を明らかにし、その機序に基づく治療開発を目指す研究を行っている。これまでに転写因子であるTFEBが高リン酸環境で減少し、これにより血管石灰化が進行することを明らかにした。現在、TFEBの分解を標的とした血管石灰化治療の可能性につき研究を進めている。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/r_ishiw
    ORCID:https://orcid.org/0000-0001-8006-5485


  • ⑹ 遺伝子改変マウスモデルを用いた後毛細血管性肺高血圧症の病態解明(瀬谷教官)
  • 後毛細血管性肺高血圧症(post-capillary pulmonary hypertension:pc-PH)は、肺静脈狭窄・閉塞や左心性心疾患に伴い発症する。典型的な肺動脈性肺高血圧症(PAH)とは病態が大きく異なり、治療に抵抗性で、いまだ有効な薬物療法は確立されていない。またその病態や薬理作用を研究するための適切な動物モデル評価系もないのが現状である。そこで私たちは、遺伝子改変によって自然発症型のpc-PH病態モデルを作製できないかと考えて、研究を進めている。

    (詳細情報は下記をご覧ください)
    Research map:https://researchmap.jp/daikiseya
    ORCID:https://orcid.org/0000-0002-1319-177X

PAGE TOP
防衛医科大学校病院 防衛医学研究センター English