医学科 Medicine

数学

本校における数学学科目及び統計学学科目の2つの学科目に関連する研究・教育は、総理布令第65号「防衛医科大学校の編成等に関する総理布令」の規定に則り創立当初にそれぞれ1名の専任教員が担当することで始まった。
数学学科目には昭和49年4月、防衛大学校数学物理学教室から守田嘉人教授が着任し、1年間、本校と防衛大学校を兼務した。昭和50年4月には、守田教授の後任として、東北大学から島野岳講師が着任し数学学科目の専任教員になった。島野講師は4年間の勤務ののち、岩手大学助教授として転任した。その後任として山田堯講師が昭和54年4月に中央大学理工学部から着任した。山田講師は、昭和56年10月に助教授、平成7年4月に教授となり、28年にわたり数学学科目の担当教員としての責務を果たし、平成19年3月定年退官した。平成19年4月には、山田教授の後任として独立行政法人理化学研究所から中村好宏准教授が着任した。平成22年6月には、岡山大学より小田牧子助教が着任し、中村准教授が令和3年4月に教授となり、現在に至っている。
統計学学科目には昭和49年4月、鈴木武次教授が防衛大学校数学物理学教室より着任、当初は兼務であったが、翌年1月専任となった。それ以来鈴木教授は、20余年にわたり統計学学科目の担当教授を務め、平成7年3月定年退官した。その後、現在まで統計学学科目に専任教員は補充されていない。統計学の授業は、平成7年4月より平成21年3月まで三野大来非常勤講師が担当、平成21年4月から中村教授が担当し、現在に至っている。

医学教育準備コア・カリキュラムの序文に、「数学はリベラルアーツの根幹をなすばかりではなく、論理的思考を養い、・・・」とあるが、本校における数学教育はこれまでこの考え方にほぼ沿って進めてきた。今後も、この方向から大きく外れることなく進めていくことが大切であると考えている。
創立時から33期生まで、線形代数と微分積分の基礎理論の習得を主要な一般目標として、講義・演習を行っていた。34期生からは、より広い教養と高い論理的思考力を身に付けるべく、従来の微分積分を取り扱う「数学」、初歩の線形代数と数学モデルを用いたデータ解析法を指導する「数理科学」、論理的思考の向上を図る「数理論理学」の3教科の講義を行い、さらにゼミ形式の講義である「統合ゼミ」を担当した。47期生からは、「数学」と「数理論理学」において、論理的思考力を養うとともに、統計学の基礎となる微積分、線形代数、確率の3つの習得を目標としている。

統計学関連分野の教育は、当初第2学年に通年週1コマの授業を行ってきた。授業内容に関しては、確率論の基礎を含む統計学の基本理論の習得を重要な到達目標としている。昨今、EBM(evidence-based medicine)なる標語のもとに、医学の臨床においても、明確かつ堅固な根拠に基づいた診断や治療が要求されるようになってきている。今後、意思決定をする立場にある者に対して、適正なデータの収集と処理に立脚した理性的・合理的な判断がますます強く求められていくだろうと思われる。そのような情勢を背景に、本校では、30期生から、統計学の授業は第3学年で社会医学系の1科目として行うことになった。47期生からは第4学年で行うこととなり、更に臨床科目との関連性を強調した形での講義をしていく予定である。今後も、統計学関連の教育をより良いものにしていく努力を重ねていきたい。

鈴木教授は永く日本における待ち行列理論研究の第一線に立っていたひとりであり、防衛大学校在籍中に発表した論文・著書は先駆的であり、数も多い。本校着任後は、医学の領域でしばしば応用される分割表に興味をもち、集中的研究を行った。その後、山田助教授と共同で、医学・生物学における確率モデルの研究を行い、「生態モデルの解析」ならびに「集団遺伝学について」として一連の論文を発表した。
島野講師は本校在職中、確率過程論の分野で2編の論文を発表している。
山田教授は、主にゲーム理論(特に囚人のディレンマ)・意思決定論に関心を向けて来たが、後に人と人との関わり合いは、ゲーム論を超えたより広範な数学的アプローチによってどのように洞察を深めることができるか、という問題の考察を行った。
三野非常勤講師は、生存解析、多重2相回帰分析を研究テーマとし、 実際のデータを参照しつつ理論的研究を進めており、本校在職中に国際学会で多くの成果を発表している。
中村教授は、遺伝統計学と多変量解析を研究テーマとしている。本学においては、統計理論のみならず、遺伝統計学の知識を生かし、他講座との共同研究も多く行っており、多数の基礎医学研究に携わっている。
小田助教は、空間統計の研究およびその応用として環境統計を専門としており、研究成果を国際学会などで発表している。また、フィンランドなど海外の研究機関と、その国の環境データを用いた共同研究を積極的に行っている。

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