学校長挨拶
挨拶
防衛医科大学校は、「医官(医師である幹部自衛官)となるべき者を育成するとともに、卒業した医官に対して、自衛隊の任務遂行に必要な医学に関する高度な知識・研究能力を修得させるための教育・訓練を行うこと」を目的として、1973年、当時の防衛庁(現防衛省)に設置されました。また、1975年に防衛医科大学校病院に勤務する看護師を育成するための高等看護学院(2016年3月をもって閉院)が作られました。その後、4年制大学教育へ移行させるため、自衛隊中央病院に設置されていた高等看護学院と合併する形で、2014年に看護学科が開設され、その時から、「保健師及び看護師である幹部自衛官と技官になるべき者を養成すること」が防衛医科大学校の任務に加わりました。
一方、防衛医科大学校病院は1977年に開設され、埼玉県における第3次救急医療機関、第1種感染症指定医療機関等として地域医療に貢献するとともに、医学科・看護学科学生の教育や医官、看護官等の卒後教育に寄与しています。
また、本校の特色のひとつとして、1996年に設立された防衛医学研究センターがあり、防衛医学の最先端を探る総合研究機関として、自衛隊医療に即した質の高い独創的研究を行っています。
医学科学生は一般大学と同様の医学教育に加えて、将来幹部自衛官となるための基礎的な教育訓練を受けるとともに、防衛医学を学びます。
防衛医学は、主として自衛隊員が任務を遂行する特殊な環境(暑熱、寒冷、湿地、熱帯、山岳、潜水、航空等の環境、戦傷病、CBRN等)が生体に与える影響を考慮すべき病態及び疾病の治療並びに健康管理、医療的危機(医療のリソースに比して患者の数や重症度がそれを超える状況等;災害医療や感染症のアウトブレイク等を含む)における医療、防衛力の支援機能としての医療(国際貢献に関連する事項等;能力構築支援や国際緊急援助隊、PKO医療支援等)等を扱っています。防衛看護学はこれに準ずる看護学といえるでしょう。
看護学科は、保健師及び看護師である幹部自衛官を養成する自衛官コースと、防衛医科大学校病院の看護師を育成する技官コースの2つに分かれており、いずれのコースも、一般の看護系大学と同様の看護学教育に加えて、前述のように防衛省として特色のある科目を学びます。
医師である幹部自衛官、看護師・保健師である幹部自衛官を目指す学生には、幹部自衛官になるための基礎を学ぶ教育訓練があります。規律ある生活の中で、将来幹部自衛官になるための基礎的な識能を身に着けることはもちろんですが、そこにある精神、即ち、礼節を重んじ、精強性(卓越性)を維持し、団結を高め、リーダーとしていかにあるべきかといった内容は、医療人としても必要とされる資質であって、人間形成の上で医学、看護学の習得と供に重要であると考えています。
本校の医学科学生、看護学科学生はともに、卒業時には、学位授与機構からそれぞれ「学士」の称号が付与されるとともに、幹部自衛官を目指すものは、自衛官として任官され、それぞれの道に進んでいくことになります。
卒業後は、医学科学生については、防衛医科大学校病院及び自衛隊中央病院を中心に、自衛隊の部隊等で勤務する際に必要な「総合臨床医」としての能力とともに、これを基盤とした臨床専門医としての能力を修得するための臨床研修を受けます。初任実務研修終了者は、防衛医科大学校が管理するそれぞれの専門研修プログラムに進むことができます。これらの初期研修及び専門研修は、それぞれ厚生労働省と日本専門医機構の規定に準拠しています。本学では、設立当初から医師たる幹部自衛官として「総合臨床医」の育成を建学の精神とし、卒業生は、厚生労働省による現在の初期臨床研修制度が確立される前の第1期生から、全科ローテーションを基本とする初任実務研修を受けています。自衛隊の部隊と同行し、様々な傷病者に対応しなければならない任務を負うことのある自衛隊医官にとって、自らの専門とは異なる領域の患者であっても、まず自分で診療し、必要に応じて専門家に繋げることができるという能力は、非常に重要なものとなります。
また、本学に設置されている医学研究科は、大学改革支援・学位授与機構から大学院の博士課程に相当する教育課程に認定されており、この過程に進んだものは、修了後、論文の審査を経て、同機構から医学博士の学位が授与されます。
看護学科のうち、自衛官コースの卒業生は、陸・海・空自衛隊の指定する病院において看護官として、技官コースの卒業生は防衛医科大学校病院の看護師として、それぞれ看護師としてのトレーニングを開始することになります。
国際貢献活動や災害派遣、さらに新たな脅威となっている感染症拡大に対する対応等、自衛隊の任務は多様化し、自衛隊衛生には大きな期待が寄せられています。本校の卒業生も、自衛隊の各地の組織に赴任して衛生活動に従事するとともに、大規模災害にかかる災害派遣の現場や、様々な国際貢献において、さらには、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおける、検疫支援、感染予防対策支援、患者受け入れ、新型コロナワクチンの自衛隊大規模接種センターの運営等において、国内外で活躍してくれています。
また、我が国を取り巻く国際安全保障環境がますます厳しくなる中、防衛力の強化の一環として自衛隊衛生の能力強化が求められています。
防衛医科大学校も、令和4年12月に閣議決定された、国家防衛戦略、防衛力整備計画において、「防衛医大を含む自衛隊衛生の総力を結集できる態勢の構築」が謳われ、自衛隊員の生命と身体を守るため、生命・医学の倫理に基づく高度な医療の実践と先進的な研究を行うアカデミアの立ち位置から、より一層貢献することが求められています。
本校は、今後も、優れた医官、看護官及び技官を育成するとともに、その果たすべき役割の重要性が一層増していることを認識し、防衛省の衛生分野におけるシンクタンクとしての役割を担いつつ、教育・研究・診療、地域貢献や国際化等において、あらゆる可能性の追求とさらなるレベルの向上を目指し、教職員一丸となって、たゆまぬ努力を重ねて参りたいと考えております。