病理診断科
防衛医科大学校病院病理診断科は、2024年4月に標榜化されました。当病理診断科では、ISO15189認定を受け、国際的に病理検査の質を保証された検査部病理検査部門において、病理診断科スタッフだけでなく、臨床検査医学講座と病態病理学講座のスタッフ、医学研究科学生、病理専攻の専門研修医官の協力のもと、正確で高品質な病理診断を継続的に行い、病院診療業務の一端を担っています。病理診断は医療の質を担保する重要な役割を担っており、当科での病理診断には、かならず複数の病理専門医が関与するシステムをとっています。患者さんに安心して当院での診療を受けていただくために、当病理診断科では、日々、正確で迅速な医療を提供するための努力を重ねております。
病理検査は、受診された患者さんからの採取された組織や細胞を評価する検査であり、組織診断(組織病理検査)、術中迅速診断、細胞診断(細胞診検査)、そして病理解剖による剖検診断が含まれます。これらの病理診断は医師が行う医行為であり、専門医資格を有した医師が、資格取得を目指す若手医師、また診断のための標本を作製・管理また検査することができる高い技術・専門性を有した臨床検査技師・細胞検査士とともに、日々の業務に取り組んでいます。その検査対象は頭の先から足の先まで、全身の諸臓器に及び、各診療科において、内視鏡検査や採尿・採痰、手術など、様々な方法で採取された組織診断検体、細胞診検体を検査します。術中迅速診断は、そのとき行われている手術の最中に組織診断・細胞診断を限られた時間で行い、執刀医が手術の術式や切除範囲の変更を行うかどうかの判断材料を提供するという検査で、まさに手術チームの一翼を担っています。さらに剖検診断では、不幸にして亡くなられた方のご遺体を解剖し、死因究明や、治療の効果・妥当性などについて検討を行い、医学の発展に寄与しています。最近の年間病理診断実績は、新型コロナウイルス感染症への対応による診療体制の変化もありましたのでやや変動幅がみられ、病理組織診断 7,000-9,000件、細胞診断4,000-7,000件、術中迅速組織診断 400-500件、病理解剖 20-50件となっています。
提出された検体は、肉眼的評価も加えたのちに、顕微鏡を使って形態を観察し、必要に応じて特殊染色や免疫組織化学といった方法で、さらなる情報・証拠を得て、その診断の確実性・妥当性を上げ、病理診断書を完成させています。血液疾患での診断では、検査部血液検査部門と協力し、病理標本だけでなく、血液検査データも加味した診断に心がけています。また、遺伝子異常や治療標的分子の発現状況の評価、さらに電子顕微鏡による解析も加えています。これらの病理診断は疾患の確定診断となり、治療方針の決定に重要な影響を与えます。特にがんの診断・治療のための根拠となる重要な情報となることも多く、また、診断そのものに詳細な臨床情報が必要な場合もあり、臨床各科とのカンファレンス等を通じた情報交換も積極的に行い、診断精度の向上に努めています。さらに難解な診断困難例については、外部コンサルテーションシステムを利用し、他施設の各分野のエキスパートへ相談しております。
診断業務を通じて得られた新たな病理学的知見は、関連学会や専門誌に発表することで広く院外にも発信し、医療の進歩に貢献し続けています。また、大学病院として医師・臨床検査技師の教育を行っており、日常の診断業務の中で若手医師や医学科学生、臨床検査技師や検査技師コースの学生への指導教育・実習を行っています。当院は病理専門医の研修認定施設、細胞診専門医・細胞検査士の研修施設にも認定されており、病理専門医、細胞診専門医、細胞検査士の育成にも力を注いでいます。